年金一元化(1)~憲法と年金

『第1号』 2005.11.2

1.現状

2004年の年金制度改正により、
(1)給付水準の50%確保(現役男子の平均可処分所得の50%)
(2)給付のマクロ経済スライドの導入
(賃金スライドに加えて、労働力人口、死亡率の変動により給付額を調整する仕組)
(3)保険料固定方式の採用
(2004年より毎年0.354%ずつ引上げ、2017年以降は18.3%)
など、かなり大きな改革が実施されたにも拘らず、公的年金の改革に対する意見は強まる一方で、特に年金一元化に関する案は、各党、各方面より提出されている。

2.何故、年金改革が必要なのか

一言でいえば、老後に対して安心できないということだと思うが、代表的論点は以下のようなことである。

(1)信頼の確保
国という最も信用リスクのない組織が実施しているにも拘わらず、将来の年金に対する国民の不安は解消されていないこと。マスメディア等による断片的情報に惑わされている面はあるものの、固定化された保険料で一定の給付水準を確保する仕組に対しての不信感を否定できていない。

(2)不公平感の増大
世代間扶養の仕組を基礎とすることによる世代間格差、職業等の差による格差について、不公平感が増している。特に、国民年金保険料の未納問題は、さらにそれを増長している。

(3)制度の複雑さ、制度体系の考え方
現在の仕組は、就業後一つの職業に従事すること、あるいは、世帯を単位として年金給付を行うことが前提として設計されているが、昨今の雇用の流動化や多様化するライフプランの下では、個人からみた場合の年金制度は複雑化し理解しづらいものとなっている。

3.今回のテーマ

以上のようなことから、次回以降、年金一元化の内容について毎回テーマを絞って意見を述べていきたい。今回は、非常に大枠として「憲法と年金」について触れたい。現行憲法における年金に直接関係する条文は、

第25条 すべて国民は、健康的で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

のみである。高齢化社会を向かえ国民負担が増していくことが確実な中、社会福祉面についてどういった国を目指すのか、あるいは、国の責務だけでなく、国民の義務についての記載がない。
ちょうど、「自民新憲法草案」が公表されたため注目して見たが、残念ながら25条はほぼ変更なしであった。国民の義務に関する文言を入れるというような議論もあったようであるが、草案には入らなかった模様である。

(年金数理人 黒田英樹)


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