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米国証券取引委員会(SEC)は米国内上場企業の財務報告にIFRSを適用することに関するワークプランの最終スタッフレポートを公表(7/13)

SECは主任会計官室(Office of the Chief Accountant)のスタッフに対し、米国内上場企業のIFRS適用に関するワークプランの作成と実行を指示し、2010年2月にそのワークプランが公表されたが、そこで言及された分野において、IFRS適用の潜在的なインパクトの調査結果をまとめた最終スタッフレポートが公表された。


米国上場企業の大半は、IFRSを権威ある基準として適用することに否定的で、またIFRSの直接適用は主要地域の市場が採用している方法とも異なる。

さらには、

  • グローバル基準設定への米国の影響力の保持
  • IFRS適用のコスト負担と、享受できる直接的メリットのバランスの不釣合いと、投資家の混乱への懸念
  • 既存の各法令、規制、私的契約書等への米国基準のリファレンスをIFRSに変更することにより生じる膨大な負担

これらを検討した結果、スタッフはエンドースメント・アプローチ(承認手続きを経て自国の会計基準に取り込んでいく)や、コンバージェンスアプローチ(部分的にIFRSに集約させていく)等、国内基準に徐々にIFRSを取り込んでいく方法に視野を拡大しながら、高品質で国際的に受け入れられる基準作りへ米国が関与していくことが期待されるという結論に至った。
 
また、スタッフの分析において明らかとなったその他のテーマは次のとおりである。

  • IFRSの発展状況:IFRSは、グローバルな財務報告コミュニティからはその質の高さが認められているものの、未だ発展不足の点がある(採取産業、保険、規制産業等)。米国基準においてもプッシュダウン会計や政府補助金等、ガイダンスが必要な分野があるが、IFRSにおける整備不足の方がより深刻と思われる。
  • 国際財務報告解釈委員会(IFRS IC)はもっとタイムリーに課題提案をすべきである。
  • 国際会計基準審議会(IASB)は、もっと各国の国内基準審議会の力を借りて各プロジェクトを進めるべきである。
  • 米国上場企業にIFRSが適用される場合、グローバルな一貫性を追求するためにも、他の管轄地域の規制当局とより緊密に協力していくことが必要であり、SECをはじめとする財務報告コミュニティが、IFRS適用の一貫性や執行において、建設的な影響を与えることができるだろう。
  • 国際会計基準審議会(IASB)のガバナンス体制:IASBは単一市場における基準適用の権限を持っていないことから、米国の投資家と市場を考慮し、保護するメカニズムを導入すべきである(FASBのアクティブな承認体制等)。
  • IFRSは100ヵ国以上で一定の基準として採用されているにもかかわらず、IASB活動の資金の供給源は30ヵ国以下の政府、企業、非営利組織等に満たない。さらには、スタッフの最大の懸念として、大規模の会計事務所からの資金供給に大きく依存しているという点がある。
  • 投資家の理解を深めるための教育を、もっと一貫したものにすべきである。
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